研究概要 |
本研究では,石油増回収のための油層内微生物増殖法の確立を目指して,今年度においては疑似油層を用いた室内実験および数値解析を行い,以下の知見を得た。 1.疑似油層として二次元の充填層を作成し,その流動特性を測定した。充填層における充填物として,1mmのガラスビーズを用いた。一端の上部より液体を注入し,他端下部より流出するように設置し,マイクロチューブポンプにより所定の流量で液体を流せるようにした。充填層の体積は9.0×10^<-4>m^3,ガラスビーズを充填した場合の有効容積は3.6×10^<-4>m^3(孔隙率は40%)であった。また,充填層の浸透率は,8.2×10^<-10>m^2であった。また,本充填層を用いて,栄養塩の移動およびシャットインの影響について塩化カリウム溶液によるトレーサー試験を行った。その結果,塩化カリウム溶液は密度差から生じる対流により,沈み込みながら流れることが明らかになった。 2.上記の実験結果をふまえ,栄養塩の移動現象を表す数学モデルを作成した。本モデルは,物質移動に寄与する移流と混合拡散の割合を表すペクレ数と密度差による対流の効果を表すレイリー数という2つの無次元パラメータを用いることにより,疑似油層における栄養塩の移動およびシャットインの影響を表し得ることを確認した。 3.使用した微生物は,通性嫌気性細菌である乳酸菌(Lactobacillus casei,ATCCl5883)とした。十分に増殖させた乳酸菌の懸濁液を上記の充填層に注入し,疑似油層における微生物の移動挙動を検討した。その結果,微生物は充填物の隙間などに詰る「クロッグ」という現象を起しながら流動することが認められた。クロッグ現象は,流速に依存し,流速が遅いほど現れやすいことを見いだした。これらのことを考慮し,疑似油層における微生物の移動現象を示す数学モデルを作成した。ここでは,栄養塩の場合と同様にペクレ数とレイリー数を用い,さらにクロッグ現象を表す係数を定義することにより,微生物の移動現象を表し得ることが確認された。
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