研究分担者 |
三谷 康浩 九州大学, 工学部, 助手 (20301343)
鹿田 光一 九州東海大学, 工学部, 講師 (50243902)
蒋 宇静 九州大学, 工学部, 助教授 (50253498)
青木 一男 工業技術院資源環境技術橋総合研究所, 九州石炭鉱山技術試験センター, 所長(研究職)
井村 秀文 九州大学, 工学部, 教授 (20203333)
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研究概要 |
本年度は水資源の開発という視点から,複合連携プロジェクトについて鉱山に関連した水資源を検討した.まず,水資源開発の現状の問題について更に分析をすすめ,岩盤内地下空間からの水資源の開発方法を検討した.そして多くの事例をもとに,賦存量,開発方式,環境保全への効果について以下の検討を行った.まず,S地区での水溶性天然ガスの開発例を示した.この水溶性天然ガスの開発は次のような特色がある. (1) 約20km^2に及ぶ沖積平野の中で,深部岩盤内は平均坑井水位低下量-170mに達するにもかかわらず,沖積層の圧密沈下を生じることはない.そして,適切なシミュレーションと揚水管理により,それに基づく地表沈下を20mm以内に抑えられることを実証した. (2) 岩盤の透水係数が10^<-5>cm/secオーダーと非常に小さく,坑井が深いにもかかわらず,水中ポンプの採用によって揚水原単位は30円/t程度と小さい. (3) この地区では岩盤内空隙に含まれる水の賦存量に対して1日当たり10^<-5>程度の量の汲み上げを制限している.この値は地表からの浸透量1日1mmとオーダー的に符合する.この適正な取水を行うことによって,環境と調和した水資源の開発が経済的にも可能である. 次に北部九州の古第三紀堆積岩中に帯水層の賦存状況および透水係数の分布を求める目的で行った325mの深いボーリング中での湧水圧試験の結果を検討した.透水係数の値から砂岩等は空隙率は花崗岩等よりかなり大きいと考えられるため,相当の水資源の賦存も期待できると考えられる. 但し,開発にあたって次のような問題点がある. (1) 地温勾配は100mにつき2〜3度であるので,深部の水はかなり高温であり,溶存物質も多くなり,水質が良くなるとは限らない. (2) 一般に深い坑井の掘削は初期費用が大きく,開発リスクが大きい. 以上により,深部地下空間の水資源は,沖積層の厚い平野を除けば至るところで近くに開発の可能性があり,建設技術,利用技術には既存のもので問題がなく,実用化できると考えられ,ある特定の地域に必要な時に,必要な量を適切な水質で供給できると考えられる.
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