鉱山や工場の廃水を処理する場合は、現在のところ有機凝集剤や無機凝集剤が主に用いられている。しかし、前者は沈積物の取り扱いが容易ではなく、後者は水質の問題で使用範囲が限定される。そこで本研究では、廃水に含まれる固形物が負のゼータ電位を持つものが多いことに着目し、正のゼータ電位を持つ鉱物を加えることによって起こるヘテロ凝集現象を利用した新しい廃水処理法の開発を行う。 本年度は蒸留水中でゼータ電位が異なる石英と蛍石を試料に用いて懸濁粒子の凝集現象を把握する研究を行った。 最初に、蒸留水中の微粒子(2.31μm以下の粒子)の重量割合が異なる石英試料(Q80:16.6%、Q93:33.1%、Q89:58.8%)と蛍石試料(F80:25.1%、F93:38.2%、F91:65.8%)を作製した。これらの試料を用いて、それぞれの単独懸濁液および等重量混合懸濁液(組み合わせはQ80とF80、Q93とF93、Q89とF91)の粒度分布を本年度購入した沈降天秤式粉体粒度分布測定装置で測定し、懸濁液のpHを変化させた場合の凝集現象を調べた。その結果、石英は全pH領域で凝集現象が見られなかったが、蛍石はpHが10以上の領域で2.31μm以下の粒子がホモ凝集することが分かった。また、石英と蛍石を等重量で混合した場合は、pHが4〜10以下の領域で4.63μmの粒子が、それ以外の領域では2.31μm以下の粒子がヘテロ凝集することが分かった。 次に、懸濁液中の微粒子の割合が凝集現象にどのような影響を及ぼすかを調べる実験を行った。その結果、石英は微粒子の割合を変化させても全pH領域で凝集現象が見られなかったが、蛍石は凝集体の最大粒子径は変わらずにその個数が増加することが分かった。石英と蛍石を等重量で混合した場合は、凝集体の最大粒子径が大きくなりその個数も増加することか分かった。
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