研究概要 |
イネのdl(drooping leaf)変異体では,心皮が雄蕊にホメオティックに転換するとともに,中肋が形成されないために垂れ葉となる.この興味深いDL遺伝子の機能を解析し,イネの花の発生の分子機構を解明すること目的として,ポジショナルクローニング法によりこの遺伝子の単離を試みた.まず,RFLPマーカーを用いてdl遺伝子座をマッピングし,この領域を包含する約250kbからなるBACコンティグを作製した.次に,染色体欠失系統を用いて,dl座の存在領域を約50kb以内に絞り込んだ.最終的に,TOS17によるタキング法も併用して,DL遺伝子の同定に成功した.dl変異体の予想DL遺伝子を塩基配列の決定およびサザンブロットで解析し,8つのdl変異体において変異を見いだすことができた.分子レベルから予想される変異の強さと表現型に表れる変異の強さの間には,相関があった.これらのことから,同定した領域が確かにDL遺伝子であることを証明することができた.DL遺伝子は新規の転写因子をコードしており,これは今まで知られているどのABC遺伝子ともことなるものであった.したがって,シロイヌナズナやキンギョソウの花の発生機構と異なるメカニズムによって,イネの花の発生が制御されていることが示唆された.
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