研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き人工染色体の構築に必須のイネ動原体領域DNAの単離と構造解析を行うとともに、イネ導入用のベクターの準備も進めた。穀類の動原体周辺に共通して局在するCCS1は、ヒトの動原体特異的タンパクCENP-Bの結合部位CENP-B boxと類似の配列(CBLS)を含んでいる。昨年度はイネのCBLSを参考に、新規のCCS1様配列RCS1516(264bp)を得た。RCS1516はイネゲノム中に約数百コピー存在すると推定された。次にRCS1516を持つファージクローンIRCB11(14 kb)を選抜し、全塩基配列を決定したところ、基本単位が1.9kbの直列反復配列RCE1が3コピー見出された。本年度は上記RCE1繰り返し配列を用いて、蛍光in situハイブリダイゼーションを行った結果から、この配列がほとんどすべてのイネ動原体周辺に局在するが、染色体によりコピー数の異なる事が示された。さらにRCE1繰り返し配列を含むYACおよびBACクローンの選抜を行い、幾つかのpositiveclonesについて、その物理的構造の解析を行っている。YACクローンの物理地図を作成する過程で、数百のサブクローンを作り,それらのYACへの位置づけを試みたが、サブクローンはほとんどすべて反復配列であり、しかも多数の異なる種類を含んでいて,解析は相当な困難を伴っている。しかしRCE1を10コピー以上含むと考えられる候補YACクローンを用いたin situハイブリダイゼーションで、このYACが2組の染色体の動原体領域に強くハイブリダイズすることがわかり、すくなくとも2つのうちの1組の染色体では、このYACが動原体の構成DNAであることが示された。現在このクローンについてはイネ細胞への導入を検討中で、400kbあまりのクローンに植物選択マーカー、イネテロメア等をつなぎ込んで、導入ベクターを構築中である。
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