研究概要 |
本年度は、とくに根の機能を窒素吸収とサイトカイニン合成に着目し,これらが葉の老化に伴う光合成速度の低下に及ぼす影響を検討した。 1. 登熟期に葉の老化による光合成速度の低下の大きい水稲は低下の小さい水稲に比較して,出穂期以降の窒素吸収量が少なく,葉の窒素含量が低かった。光合成速度と密接な関係のあるRubisco含量は窒素含量が等しくても光合成速度の低下のはやい水稲は低く、Rubisco含量の維持には根から地上部に送られるサイトカイニンの関与が示唆された。 2. 低土壌水分条件に生育するトウモロコシは葉の老化による光合成速度の低下が大きく,さらに葉身の窒素濃度と光合成速度との間には密接な関係があった。この低土壌水分条件に生育するトウモロコシの茎基部に10^<-4>mol L^<-1>のリボシルゼアチン溶液を注入すると老化による光合成速度の低下が抑制された。しかし,水のみを注入したり,10^<-3>mol L^<-1>の硝酸アンモニウム溶液を注入しても光合成速度の低下の抑制は認められなかった。 以上の結果から、葉の老化による光合成速度の抑制には窒素とともに根から地上部に送られるセサイトカイニンが重要な役割を果していること,さらに,低土壌水分条件で葉の老化による光合成速度の低下が促進されることには,根から地上部に送られる窒素とサイトカイニン量の低下が関係していることが示唆された。
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