研究概要 |
本研究はカンショのスクローストランスポーター着目し,その一次構造や器官別の発現を検討することにより,カンショの塊根形成過程におけるスクローストランスポーター役割を明らかにする目的で行った.まず,これまで報告されている他の植物のスクローストランスポーター保存性の高い領域をもとに2つのプライマーを作成した.そして,カンショの葉身及び塊根から抽出した全RNAを鋳型としてRT-PCRを行った.葉身からは約300bp(LSUT),塊根からは約450bpのcDNA(IBSUT)が増幅された.LSUTは他の植物のスクローストランスポーターとほとんど相同性が認められなかった.IBSUTには塩基配列の異なる3種類のcDNAが存在した.この3種類のcDNAと他の植物のスクローストランスポーターの相同性を比較すると,塩基配列レベルでは60-70%,アミノ酸配列レベルでは57-78%の高い相同性を示した.また,塩基配列から予想されるアミノ酸配列についてそれぞれ疎水性プロットを行ったところ,他の植物のスクローストランスポーターと類似した親水性及び疎水性領域の出現パターンを示した.したがって,塊根から得られた3種類のcDNAはいずれもカンショのスクローストランスポーターのcDNAであると考えられる.更に,これらの3種類のcDNAについて,予想されるアミノ酸配列に基づいて系統樹を作成したところ,3種類のcDNAは系統関係が大きく異なることが分かった.以上のことから,カンショには少なくとも3種類の塊根で働くスクローストランスポーターが存在することが明らかとなった.
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