研究概要 |
スクローストランスポーターは細胞膜に存在し,H^+の濃度勾配に依存してスクロースを輸送するタンパク質でアポプラストを介したスクロースの輸送に関与していると考えられている.本研究ではカンショに特に塊根形成過程におけるスクロースの輸送経路を明らかにするため,スクローストランスポーターのcDNAの特徴と発現様式について検討した. カンショの塊根には少なくとも3種類のスクローストランスポーター(それぞれのcDNAをIBSUTl,IBSUT2及びIBSUT3と名付けた)が存在し,IBSUTlとIBSUT2は69%,IBSUT2とIBSUT3は73%,IBSUTlとIBSUT3は67%の相同性を示した.また,ジャガイモのスクローストランスポーターのcDNAと比較するとIBSUTlは65%,IBSUT2は71%,IBSUT3は73%の相同性を示した,IBSUTl,IBSUT2及びIBSUT3をプローブとしたノーザンプロット分析ではそれぞれ約3.1kb,約2.4kb及び1.6kbの位置に一本のバンドが検出され,スクローストランスポーターの種類によってmRNAの大きさが異なった.また,IBSUTlのmRNAはすべての器官でほぼ一定のレベルであったが,IBSUT2のmRNAレベルは葉柄と若根で高く,IBSUT3のmRNAレベルは葉柄で著しく高かった.さらに,IBSUT2とIBSUT3のmRNAレベルは塊根形成にともなって低下したが,IBSUTlのmRNAは塊根形成過程を通じて一定のレベルを維持した. 以上の結果から,サツマイモの根には少なくとも3種類のスクローストランスポーターが存在し,塊根形成過程においてmRNAレベルが一定であるものと低下するものに分かれることが明らかとなった.
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