研究概要 |
C174(アフリカイネ)と日本晴,およびそのF1、さらにF1に両親系統を戻し交配して得た10系統を供試して、葉面飽差に伴う光合成変化と葉の切断処理後の光合成速度の推移からみた特徴を比較・検討した.葉面飽差を急増させると気孔伝導度が低下したが,このような湿度変化に対する気孔反応はC174より日本晴のほうで速やかに進行し,F1は両親系統の中間的な反応速度を示した.また,乾燥条件への移行後,C174の気孔伝導度が時間の経過に伴って漸増する傾向にあったのに対して,日本晴とF1は一定値のまま推移した.移行処理前後の光合成速度の減少率は気孔伝導度の低下率が大きい系統ほど大きい傾向にあり,またC174はそのような気孔伝導度の低下を考慮してもなお日本晴やF1より光合成の減少率が大きかった.気孔伝導度の減少に伴う葉内CO_2濃度の低下がC174で大きかったことから,日本晴やF1はC174より葉肉細胞の光合成活性が高く維持されたことが推察され,また戻し交雑系統の中にも類似する反応パターンを示すものがあった.葉を切断したとき,日本晴では切断直後に気孔伝導度の一時的な上昇が認められたのに対して,C174ではそのような現象が認められないか,あっても軽微であった.また,気孔伝導度の低下に伴って葉内CO_2濃度はいったん低下したが、その後増加傾向に転じた.切断処理からの積算蒸散量の増加(葉内水分含量の減少)に伴って光合成速度の律速要因が気孔の閉鎖によるものから葉肉細胞の光合成活性の低下へと移行したことを示す.積算蒸散量に伴う光合成活性の低下に大きな系統間差異が検出され,葉内水分の減少に対する光合成活性の維持能力が著しく高い「戻し交雑系統」が見出された. また,草丈の違いに伴う乾物生産能の違いに,光化学系の活性を介した光合成制御の機構が関与していることを示した.
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