研究課題/領域番号 |
09460015
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
弦間 洋 筑波大学, 農林学系, 助教授 (70094406)
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研究分担者 |
近藤 悟 広島県立大学, 生物資源学部, 助教授 (70264918)
小松 春喜 九州東海大学, 農学部, 教授 (60148971)
伊東 卓爾 近畿大学, 生物理工学部, 助教授 (90033274)
中野 幹夫 京都府立大学, 農学部, 助教授 (10093692)
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キーワード | 品質改善 / 果皮着色 / リンゴ / ブドウ / 暖地 / 不適環境 / アントシアニン / ABA |
研究概要 |
昨年度の成果から暖地産果実の成熟生理を解明するに当たり、果皮で発現する色素の生成経路を精査することとした。すなわち、ブドウ“巨峰"とリンゴ“ふじ"について果実発育段階別に前駆体を含むフラボノイドの消長を追跡した。その結果、ブドウでは着色開始期(ペレゾーン)前からフェニルアラニンが増加し、カテキンで代表されるプロアントシアニンは幼果期で高いレベルにあったが、アントシアニンが急増する満開60日以降頃より急減した。アントシアニンはマルビジン-3グルコシドをはじめとする数種類の配糖体が確認された。リンゴではブドウと同様、プロアントシアニン、フラボノールとも幼果期より減少し、一方アントシアニンは9月下旬より急激に増加した。リンゴの主要アグリコンはシアニジンであった。 つぎに産地別ブドウ果実の色素成分分析の結果、適地である長野産はアントシアニン含量が高く、暖地産のものは低含量であったが、熊本産はプロアントシアニンやフラボノール含量が高く、前駆体のフラバノノールからアントシアニンに至る経路が高温によって阻害され、一方、和歌山、広島産ではこれらの含量が低く、フラバノノール合成以前の過程で阻害された可能性が推察された。ジャスモン酸アナログのn-プロピルジハイドロジャスモン酸(PDJ)をABA混用処理をペレゾーン以前に行うと、不適環境下での着色改善に効果があった。 暖地リンゴの着色に及ぼす環境要因について、紫外線(UV)吸収及び透過フィルムで被袋し、さらに果実温を調節して検討したところ、低温(外気温より3〜4℃低い)によってアントシアニン蓄積が認められ、内生ABA含量も増加する傾向にあった。しかし、UVの影響については明らかにし得なかった。暖地産“ふじ"リンゴは貯蔵中のアントシアニン蓄積が遅れたが、これはプロアントシアニン、フラボノール量が適地産(長野)に比べ少ないことから、色素生成経路における酵素活性発現に差異があることが考えられた。リンゴ品種には貯蔵中に果皮に脂発生するものがあり、“つがる"果実で検討したところ暖地産(和歌山、熊本、広島)は“ふじ"同様着色は劣るが、適地産(秋田)に比べ脂上がりが少ないことが認められた。 果実成熟にABAが関与することが前年及び本年度の成果から伺えたが、ブドウ“ビオーネ"における消長も一致した。すなわち、着色期前にs-ABAのピークが観察され、着色に勝る有核果で明らかに高い含量であった。また、種子で生産されたs-ABAは果皮ABA濃度を上昇させるが、t-ABAへの代謝はないことを明らかにした。 モモの着色機構についても、無袋果が有袋果に着色が勝ることから直光型であることを認めた。さらに裂果障害を人為的に再現するため、葉の水ポテンシャルで-3.0MPa程度の乾燥処理を施したが裂果は起こらなかったものの、糖度が向上すること、フェノールの蓄積があることなどを認めた。これらの知見は暖地における品質改善への指針として利用できる。
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