研究概要 |
レタスの葉や茎頂の形態から発育相の変化を推定しようした。このため,実験1ではレタス品種テルミーを昼温25℃,夜温20℃と昼温20℃,夜温15℃の人工気象室で栽培し,花芽分化の時期を調べた。また,実験2では,品種極早生シスコを昼温23℃,夜温17℃の人工気象室で栽培し,葉位別に葉の屈曲程度と葉柄におけるデンプンの局在性を調査した。実験1において,軸に垂直な茎頂切片を観察すると,はじめ平板状であった生長点は,わずかに丸く肥厚した後,突出した。突出した生長点部に形成される葉原基の腋部には,その後新たな生長点が形成された。平板状の生長点が丸く肥厚し始める時期を花芽分化初期,突出した生長点部に形成される葉原基の腋部に新しい生長点が確認できた時期を側花房分化期とした。花芽分化初期は25/20℃区では播種後30〜33日目,20/15℃区では39日目であった。また,側花房分化期は25/20℃区では播種後38日目,20/15℃区では54日目であった。花芽分化初期における長さ1cm以上の葉の数は温度に関わらずほぼ18枚で一定であり,また葉原基数は35〜40で温度による差は小さかった。これは,一定の発育段階に達した後に初めて栄養生長から生殖生長への相転換が起こるのであり,それ以前には花成刺激を受けても反応が起こらないことを示唆するものと考えられた。実験2において、レタスの屈曲は20葉前後の葉で見られた。また,屈曲を示さない第9葉と屈曲を示した第25葉の中肋におけるデンプン粒の分布を調べたところ,どちらの葉においてもデンプン粒は維管束周囲の細胞にのみ観察され,しかも細胞内では胚軸側に分布するものの割合が多かった。すなわち,デンプン粒の数や分布で見る限り,葉の組織化学的特性は発育段階によって変化しないと考えられた。
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