研究概要 |
当初の研究計画の通り,本年度はこれまでの交配試験でS遺伝子型が明確にされているカンカオウトウ16品種を供試し,様々な制限酵素を用いたゲノムサザン分析を行い,S遺伝子型の判別法の確立を試みた.その結果,CTAB法で抽出しEcoRlとHindlllで消化した全DNAをS2,S3,あるいはS6-RNaseのC2-C5フラグメントとサザンハイブリダイズすることで,これまで同定されているS1-S6対立遺伝子を相互に見分けることが可能になった. 引き続いて,昨年度の実験で単離したS2,S3,S6-S-RNase cDNAの塩基配列を比較検討して見い出された保存領域の配列から2種類のフォワードプライマー(T2とC2)および1種類のリバースプライマー(C4R)を考案し,上記同様の方法で単離した16品種の全DNAをPCR増幅したところ,S1-S6の6種類の対立遺伝子を相互に見分けることが可能になった. 以上の結果より,本研究の主要目的の一つであるDNA分析によるカンカオウトウのS遺伝子型の判別法が確立できた.すなわち,より詳細なそして正確な判別が必要な際はゲノムDNAのサザン分析を行い,またより簡便にそして短時間でS遺伝子型の判別をする際にはPCR分析を行うことで,カンカオウトウのS遺伝子型を交配試験によらずに,そしてまた開花の見られない幼若実生段階で行うことが可能になった. 本研究のもう一つの主要な目的である形質転換によるオウトウの自家和合性組み換え個体を作出するために,昨年度に作出したシュート培養系の葉切片からの再分化系の確立に関する予備試験を行ったところ,葉切片からの不定芽形成が認められた.しかしながら,不定芽の形成率は非常に低く,また形成された不定芽からの植物体の再生も困難であったので,来年度引き続いて,葉片からの再分化に関する検討を行う予定である.
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