研究概要 |
本年度は、Prunus属果樹類のアグロバクテリウム法による形質転換系を確立し,昨年度と一昨年度の両年の研究で得られたS-RNaseのcDNAをアンチセンス方向で組み込むことで自家和合の形質転換個体を作出するために,まずはカンカオウトウを材料に種々の検討を行った.種々のサイトカイニンとオーキシンを添加した培地に,未受精の胚珠組織や未熟胚組織,あるいは成熟胚の子葉切片を置床し,培養を行ったが,カルスの形成は認められるものの不定胚や不定芽などの器官形成は全く認められなかった.そこで,培養シュートから葉片を作製し,種々のサイトカイニンとオーキシンを添加した培地上で培養を行ったが,前記の胚組織の培養と同じく,カルスの形成は認められるものの,不定胚や不定芽などの器官形成は全く認められなかった.このように,本年度は再生系の確立はできなかったが,本年度に得られたデータを吟味し,来年度も引き続いて,培地条件等をさらに検討して,再生系の確立を目指す予定にしている.なお,本年度も、培養の実験に加えて,昨年度と同様にクローニング実験も行い,オウトウのS-RNase遺伝子の部分配列やサンカオウトウやニホンスモモのS-RNaseのcDNAを単離することに成功した.オウトウのS-RNase遺伝子の部分配列をクローニングし,その塩基配列を明らかにしたことで,昨年度までの実験で確立していたPCRによるS遺伝子型の判別よりも,さらに精度の高いPCR/RFLPによるS遺伝子型の判別法を確立できた.この手法を適用することで, オウトウ新品種のS遺伝子型の判別を行うことに成功した.
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