研究課題
平成10年度の研究成果は次の通りである。1 カンキツ園に生息する草を4月上旬と7月上・中旬に採取し、それらの草の根におけるVA菌根(VAM)菌の感染状態を観察した。その結果、春草ではスイバ、カモジグサ、ハコベ、クサフジ、ホトケノザ及びウマゴヤシ、夏草ではヒメムカシヨモギ、イヌビユ、ギョウギシバ、カズノコグサ、ツユクサ、カタバミ及びメヒシバにおいて、70%以上の菌根感染率を示した。また、春草のハコベ、クサフジ、及びホトケノザにおいてはVAM菌胞子が根中に多数形成されていた。しかし、イヌタデ、ギシギシ及びスギナでは感染が認められなかった。2 ナリルチン及びヘスペリジンを土壌に処理し、カラタチ根のVAM形成や樹体生長に及ぼす影響について調査したところ、これらの物質はVAM菌の生長を促すことが判明した。これらの物質はカンキツジュースかす中にも含有されており、ジュースかすから25%メタノールで溶出させた後、土壌かん(潅)注またはスプリンクラー散布によって利用することが期待できるようになった。3 VAM菌の人工増殖を目指して、培地組成の検討を行った。ユーパリチン、プトレッシン及びキビ根の25%メタノール溶出物を添加して菌糸形成やその後の生長を観察した。これら物質の添加区にあっては胞子を切除した菌糸から新しい菌糸が形成され、さらにその菌糸が伸長していることが確認された。これらの成果は人工培養によるVAM菌の増殖に向けて扉を開くものであり、平成11年度も継続して研究に当たりたいと考えている。
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