研究概要 |
平成9年度は、当初の計画に沿って、わが国に分布するハダニ類を収集し、それらのDNA変異、形態変異の両方から追求した。まず、形態については、全国的に行った採集によって、Tetranychus属を5種、Eotetranychus属を7種(2種未記載種)、Schizotetranychus属を7種(1種の未記載種),Oligonychus属3種、Pnanonychus属3種を採集し、プレパラートおよびSEM標本を作成した。それらをもとに、一部の種について、新しい分類形質の取り出し作業に入っており、ハダニ類の胴体部形質において、標本や保存条件に対して特に安定な形質が、opisthosomal venterに存在することが判明した。この形質は、今後ハダニ類を相対成長の視点から解析する場合に、体サイズ(体長、体幅)の指標を得る上で重要なものとなろう。 一方、DNAの変異分析については、主にSchizotetranychus属の種についてミトコンドリアDNAのCOI領域の取り出しおよび塩基配列の決定を行った。450bpの長さについて決定した配列を、フランスですでに行われているヨーロッパ、北米のハダニの同位置の配列と比較し、それらを一括して近隣結合法(NJ法)を用いて系統解析したところ、従来形態から提案されてきた属の系統関係は、本研究の計画段階で予想された通り、大幅に変更される必要があることが示唆された。一方、リボソームDNAのITS2部位の配列決定には、まだPCR産物の安定性が得られないために、成功していない。COIのさらに多くの種での配列決定とITS領域を含めたあらたな配列の決定方法の確立が平成10年度の課題となった。
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