Xanthomonas属細菌のavrBs3/pthAファミリーは互いに高い相同性を示すにも関わらず、抵抗性誘導を司るものと、病原性を司るものとがある。そこで、pthA遺伝子の作用機構を調べる事によって、両反応の共通した誘導機構を明らかにする事を目的とした。カンキツかいよう病菌のpthA遺伝子及びこれと相同性を示す遺伝子をクローニングし、その塩基配列を決定した。その結果、これらはその中央部にある102塩基対の繰り返し配列に違いがあるだけで、繰り返し配列に続く核移行性配列を含めて、完全に配列が一致した。二次構造の違いが発病能力の違いとなっている事が明らかになった。植物に病原性を持たない大腸菌及びPsseudomonas fluorescensに、それぞれのpthA相同遺伝子とhrp遺伝子群とを同時に形質転換させたところ、カンキツにかいよう症状を呈するようになることを発見し、本発病因子がタイプIII分泌機構によって植物細胞内に注入されて、発病に導くことが明らかになった。そこで、本発病遺伝子を発現ベクターに接続し、大量培養し、純化したタンパク質を用いて、カンキツ葉からこの発病因子と結合するタンパク質を純化した。次に、このN末端アミノ酸配列を決定し、この情報を基にして、本レセプタータンパク質生産遺伝子をクローニングした。この遺伝子配列を決定し、その翻訳産物のアミノ酸配列の相同性検索から、本タンパク質が病態リグニン合成の鍵酵素CCoAMTであることが判った。この発見によって、リグニン合成の撹乱がかいよう症状に導く事を示唆する事ができた。
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