研究概要 |
1.Polymyxa属菌の寄生性とウイルス伝搬性 従来,Polymyxabetae菌によって伝搬されるbeet necrotic yellow vein virus(BNYVV)の寄生範囲は狭く,テンサイとアカザ科の植物にのみ感染が認められていた.しかし,P.betae菌の遊走子を用いて約50種の植物に対して接種を行った結果,本菌は多くの植物の根に感染することが明らかとなった.大部分の植物の根には休眠胞子の形成は認められなかった.P.betae菌の感染に伴いこれまで非寄主と考えられていた植物にもウイルスが感染することがわかった.とくにNicotianabenthamianaは感受性が高く,容易に全身感染することから,実験植物に好適であると考えられた. 2.ウイルス変異株を用いた伝搬試験 BNYVVに存在するRNA3,RNA4およびRNA5のP.betae菌の伝搬に及ぼす影響について検討した.テンサイを用いた場合,RNA3とRNA4またはRNA4とRNA5の組み合わせをもつウイルスが安定して伝搬された.しかしながら,N.benthami anaを用いた場合には,RNA1とNNA2のみを含む分離株でも効率よく伝搬され,RNA4の効果は認められなかった.このことは,RNA3,RNA4およびRNA5は寄生特異的に機能していることを示唆している. 3.試験管内転写系の確立 BNYVVの菌伝搬に関与する遺伝子RNA3,RNA4およびRNA5のcDNAを作成,プラスミドpUC19にクローニングし,その5'末端にT7プロモタ-配列を付加したクローンを構築した.in vitroでの転写産物をBNYVVのRNA1とRNA2を含む分離株のRNAとともに検定植物に接種したところ,それぞれのゲノムが増殖し,野生株と同じ表現型を示した.以上,RNA3,RNA4およびRNA5について感染性のある転写系を確立した.
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