3株の25K遺伝子の塩基配列を決定した。BmNPV-TとBmNPV-Laでは違いはなかった。このことからBmNPV-Tの多角体形状は25K遺伝子によるものではないと示唆された。BmNPVの25K欠失株を作成し多角体形状と細胞内の多角体数をBmNPV-Hと比較した。BmNPV-Hと比べて多角体数は減少し形状も変化することが確認され、BmNPVにおいてもFP遺伝子として機能することが確認された。25K遺伝子の発現様相を調査するためにmRNAの詳しい調査を行った。25K遺伝子由来の転写産物が最初に検出されたのは感染後72時間で、mRNAの3'末端の解析では3株とも違いがなかった。25K遺伝子の5'非翻訳領域には初期プロモーターと後期プロモーターが確認され、初期プロモーターの使用が確認された。AcMNPVでは後期遺伝子で、感染後18時間で翻訳産物が確認されている。これらのことからBmNPVの25K遺伝子は他のNPVとは違う転写制御を受けていることが示唆された。NPVは通常中腸細胞では多角体をほとんど形成しないが、BmNPV-Laは他の株と比較して中腸細胞内で多角体を形成し易い。この原因がどこにあるのかを調査するためにBmNPV-Hと比較してmRNAの転写量、タンパク質発現量を中腸、脂肪体で調査した。BmNPV-HとBmNPV-Laの多角体遺伝子のmRNA量は、中腸と脂肪体で差はなかった。中腸でのmRNA量をゲノムあたりに換算すると、BmNPV LaはBmNPV-Hに比べ10倍程度多かった。多角体タンパク質をウエスタン分析により調査した結果、脂肪体に比べ中腸でのタンパク質量は少なくBmNPV-H、-Laとの差はなかった。よって中腸細胞内で多角体が形成されるか否かは多角体タンパク質の翻訳に問題があるものと推測される。
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