研究概要 |
クワを用いた分子農業を構築するためには、再現性の高い個体再生系の確立が前提となる。本年度においては、葉片培養による個体再生条件を検討した。その結果、高濃度のサイトカイニンと抗オーキシン剤の添加が不可欠であり、次のような2ステップ培養法を確立した。 ステップ1:10^<-5>M6-benzylaminopurine(BA)と10^<-6>M2,3,5-triiodobenzoicacid(TIBA)を含む培地で、クワ実生苗を育成する。 ステップ2:ステップ1で育成した無菌苗から展開した本葉を摘出し、それを外植片として、10^<-5>M1-phenyl-3-(1,2,3-triadiazol-5-yl)urea(TDZ)と10^<-7>MTIBAを含む培地で培養する。 この2段階ステップを経ることにより、置床した葉片の葉底部から、高頻度で不定芽形成が誘導された。また、この不定芽をホルモンフリー培地に移植することにより、完全な幼植物体が再生されることを確認した。これらの結果は、クワ葉体内のサイトカイニン含量は低く、オーキシン濃度が高いため、葉片からの不定芽形成が阻害されていることを示唆している。サイトカイニン/オーキシンの濃度比バランスを人為的に変化させることが個体再生系の確立に重要であることが明らかになった。本実験系を用いて、クワ細胞に外来遺伝子を導入する予定である。
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