研究課題/領域番号 |
09460042
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
応用微生物学・応用生物化学
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
神尾 好是 東北大学, 農学部, 教授 (00109175)
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研究分担者 |
金子 淳 東北大学, 農学部, 助手 (30221188)
冨田 敏夫 東北大学, 農学部, 助教授 (00126129)
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研究期間 (年度) |
1997 – 1998
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キーワード | 黄色ブドウ球菌 / ロイコシジン / ガンマヘモリジン / 血球崩壊毒素 / X線結晶解析 / 二成分毒素 / 膜孔 |
研究概要 |
近年、黄色ブドウ球菌が人間を含む動物に重篤な疾患を引き起こすことが報告され、社会的に大きな問題となっている。その原因は、MRSAなどの多剤耐性菌の出現、並びに分泌毒素による宿主細胞の崩壊にある。多剤耐性獲得機構はすでにHiramatsuらにより明らかにされたが、毒素に関しては、遺伝子、構造並びに分子レベルでの作用機構は全く不明であった。黄色ブドウ球菌は、感染に重要な白血球崩壊蛋白毒素ロイコシジン及びPanton-Valentine型ロイコシジン(PV-ロイコシジン)、並びに赤血球崩壊蛋白毒素γ-へモリジンを大量に分泌する。私は世界に先駆けて、上記全毒素成分の単離精製、並びに遺伝子のクローン化に成功し、以来今日まで、(1)ロイコシジン並びにγ-へモリジンはそれぞれLukFとLukS、LukFとHlg2から成り、LukFを共通成分とする二成分毒素であること、一方、PV-ロイコシジンはLukF-PVとLukS-PVから成る二成分毒素であること、(2)PV-ロイコシジン遺伝子は新規溶原ファージφPVLゲノム上に存在し、ファージ感染によりロイコシジン生産性が伝播されること、(3)毒素成分の標的細胞への結合には順序が存在し、標的細胞膜上で各成分比が1:1の6量体から成る膜孔を形成して毒素活性を示すこと、(4)ロイコシジン活性にはLukSあるいはLukS-PVの白血球膜上でのプロテインキナーゼAによるリン酸化が必須であること等の新知見を次々に発見してきた。さらには、φPVLの全ゲノム構造解析、並びに毒素成分の細胞崩壊特異性に係わるアミノ酸残基の同定に成功した。又、米国コロンビア大学生物物理学研究室のEric Gouaux博士との共同研究で、水可溶性モノマーとして分泌される毒素成分が標的細胞膜上で水不溶性分子へ構造変化を起こす機構をLukFの生化学的解析並びにX線結晶解析により解明した。これらの研究成果は、黄色ブドウ球菌に止まらず、広く細菌由来の細胞崩壊毒素の作用機構、並びに水可溶性蛋白分子の細胞膜上におけるアッセンブリー機構の解明に著しく貢献した。
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