研究概要 |
(1) トリコスタチンを用いたアセチル化関連遺伝子のクローン化と細胞周期停止にかかわる遺伝子の同定 分裂酵母からはじめてのヒストンデアセチラーゼ遺伝子phdl^+のクローン化に成功し、その機能がトリコスタチン耐性や減数分裂開始に必須であることを明らかにした。また、トリコスタチンによる細胞周期停止の原因遺伝子として、RT-PCR等により、CDK阻害蛋白質p21遺伝子を同定した。p21の発現誘導により、トリコスタチンはがん抑制遺伝子p53,pRbを欠損した細胞中でも細胞周期停止できることを示した。また、p21遺伝子プロモーターの変異解析から、トリコスタチンによる誘導にはTATA配列近傍のSp1結合部位が関与することを示し、p21誘導にかかわるp53の非存在下でも転写活性化できる機構を明らかにした。 (2) レプトマイシンの標的分子の解明と蛋白質核外移行受容体の発見 レプトマイシンの標的と考えられるCRMlのヒトホモログcDNAのクローン化にはじめて成功し、発現の細胞周期依存性、CRM1の局在性、蛋白質核外移行に関与することを明らかにした。つづいてヒトCRM1が直接LMBと結合することを証明した。さらにCRM1が蛋白質核外移行シグナル(NES)と結合して核外へ輸送するNES受容体であることを示し、レプトマイシンがその特異的な阻害剤であることを明らかにした。さらに分裂酵母においてCRM1によって負に制御されることが知られていたAP-1様転写囚子Pap1のC末端にNESが存在し、CRM1によって核外輸送されることによって機能が阻害されていることを明らかにした。
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