研究概要 |
ストレプトマイシンを生産し液体培養中でも胞子を形成するという特徴をもつ放線菌、Streptomyces griseus 2247株の線状染色体の構造とそのダイナミックな再編成を分子レベルで解析し、次のような成果を得た。 (1) 2247株の線状染色体の末端断片をクローン化し、末端塩基配列を決定した。そこには、他の多くの線状染色体や線状プラスミドの末端に共通して存在する保存配列はなかったが、ループ構造を取れる逆位配列がいくつか見つかった。このような構造が線状DNAの複製や保持に働いているものと思われる。また左右の末端逆位配列の内側の先端には、挿入配列のような配列は見つからなかった。 (2) 2247株から紫外線照射によって更に多くの欠失変異株を得、それらの染色体の欠失サイズとトポロジーとの関係を調べた。その結果、左末端側にあるafsA遺伝子付近の領域が線状構造の維持に必須であるという仮説は支持されたが、まだ最終的な証明には到っていない。 (3) 欠失変異株404-23,N2及び83の環状化染色体の融合部と左右の欠失末端の塩基配列を比較した結果、線状染色体の欠失にともなう環状化は非相同組み換えによって起こることか明らかになった。 (4) ただ一つ線状染色体を保持している欠失変異株301-22においては、両末端領域にある2つのほぼ同一のリポ蛋白様遺伝子の組み換えによって、右末端領域から左末端側への乗り換えが起こっていることが明らかになった。更にその先の左右の欠失末端には、大きなDNA断片が新たに付加しているという複雑な変化が起きていることが分かった。
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