これまで、海洋動物から数多くの新規生理活性物質が見出されている。それらの多くは非選択的な細胞毒である。特定の細胞機能だけを選択的に阻害する物質が見い出されれば有用な薬剤の開発などにつながる可能性がある。われわれはイトマキヒトデなど棘皮動物の胚発生に対する選択的阻害活性を指標として、活性物質を海綿抽出液中に探索した。その結果、いくつかの新規生理活性物質を見出した。すなわち、Rhopaloeides属海綿から新しいnorsesterterpenesを得、これらがイトマキヒトデなど棘皮動物の胚発生を選択的に原腸胚期で停止させることをあきらかにし、また、それらの化学構造をあきらかにした。Ancorina属海綿からはイトマキヒトデの胚発生を胞胚期直前で停止させる新規化合物を得、これをAncorinoside Aと命名した。この化学組構造を決定した。その結果、Ancorinoside Aはきわめて特異なテトラミン酸を有する糖化合物であることが判明した。 また、われわれがすでにJaspis属海綿からイトマキヒトデやバフンウニの新規受精阻害物質として単離し、化学構造決定したJaspisinがバフンウニ孵化酵素などのマトリックス型メタロエンドプロテイナーゼだけに選択的に阻害する化合物であることがあきらかになった。この結果から、受精を阻害には精子一卵融合にマトリックスメタロエンドプロテイナーゼが決定的な役割を果すことがあきらかになった。
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