研究概要 |
細胞周期を制御する薬剤は,細胞生物学研究に重要なツールとなるとともに新しい抗癌剤としても期待される。我々は本研究課題で,微生物代謝産物より新しい細胞周期阻害剤の探索を行い,その作用機構の解明を目的として研究を行った。1.酵母を用いたスクリーニング:出芽酵母の接合因子シグナルカスケードは動物細胞のMAPキナーゼカスケードと共通性が高いことに着目し,シグナル伝達阻害剤のスクリーニングを行った。その結果,あるカビの培養産物中に阻害活性を見出したので,阻害剤の精製を行っている。 2.微小管重合阻害剤:カビから細胞周期阻害剤としてTryprostatin A(TPS-A)およびその類縁体(cyclotryprostatin,spirotryprostatin)を見出した。TPS-Aは,細胞の微小管ネットワークを崩壊させることによって,細胞周期をM期で停止させた。 さらに精製したtubulin,MAP2,Tauを用いた再構成系を用いてTPS-Aの作用を検討したところ,TPS-AはtubulinのC末と相互作用して微小管結合蛋白質(MAP)依存的なtubulin重合を特異的に阻害した。他の7種の類縁体のうち6種は微小管重合阻害活性を示したのに対 し,一種(cyclotryprostatin D)は逆に重合促進作用を示した。以上の結果はtryprostatin類がtubulinのMAP結合領域と作用し,MAPのagonist,antagonistとして作用することを示唆する。
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