腸管上皮の3つの機能、すなわち(1)栄養素輸送/透過機能(2)バリアー機能(3)シグナル受容/伝達機能と食品因子との関わりについて引き続き検討を進め、以下のような成果を得た。(1)については、グルコース輸送に及ぼす緑茶カテキンの影響と、タウリン輸送に及ぼすリゾレシチンの影響を中心に調べ、前者では緑茶中のエピカテキンガレートやエピガロカテキンガレートが、腸管上皮細胞表面のナトリウム依存的輸送担体にアンタゴニスト的に作用してその輸送機能を阻害する機構を明かにした。また、リゾレシチンによるタウリン輸送担体の阻害作用を見い出し、この阻害活性がリゾレシチンの脂肪酸鎖長やコリン基に依存していること、リゾレシチンの示す界面活性も必要な要素だが、阻害活性の十分条件ではないことを明かにした。リゾレシチンは細胞膜に作用してタウリン輸送担体の活性に影響を与えると考えられた。(2)については、エノキタケから単離したタイトジャンクション調節性蛋白質の作用機構を解析し、本蛋白質が細胞膜に小孔を形成し、それによる細胞内外のイオンバランスの破綻がタイジャンクション構成蛋白質であるオクルディンのリン酸化、脱リン酸化などの変化を介してタイトジャンクションを開き、物質透過性を上昇させるという機構を見い出した。(3)については、食品因子の関与を明確に示すデータは得られなかったが、基底膜側から作用したインターフェロンγが細胞内のカルシニューリンの活性を変化させることによって、タイトジャンクションを構成するZO-1の存在状態を変化させたり、いくつかのアミノ酸輸送担体の活性を調節して、細胞層での栄養素吸収/透過を制御することを明らかにした。
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