研究概要 |
腸管上皮の主要な3つの機能、すなわち(1)バリアー機能、(2)輸送・透過機能、(3)シグナル受容・伝達・変換機能が食品成分によってどのような影響を受けるかについて検討した。(1)については、上皮細胞間のタイトジャンクションでの物質透過性を増大させる食品因子に注目し、ヒト腸管上皮細胞Caco-2を用いた実験系によって活性成分の検索を行った。その結果、エノキタケ水溶液中に分子量約31,000の活性タンパク質を見出し、そのcDNAクローニングと配列分析を行った。また、このタンパク質が細胞膜に小孔を開けて細胞内外のイオンバランスを壊し、細胞骨格等の変化を介してタイトジャンクションを開くという作用機構を提示することが出来た。(2)については、Caco-2細胞やウサギ小腸刷子縁膜小胞を用いた実験により、緑茶中に腸管上皮のグルコース輪送担体の活性を抑制する複数の成分があること、その一つがカテキンであること、特に没食子酸を持つカテキンがこの活性を持つこと、さらにその阻害様式は競合的阻害であることを明らかにした。また、ゴマ抽出物中からタウリン輸送担体の活性を強く抑制する成分を単離し、本活性成分の本体がリゾホスファチジルコリンであること、その作用は即効的で、おそらく細胞膜に作用してその状態を変化させるとともに直接輸送担体に作用しているものと推定された。(3)については、Caco-2細胞層を用いて、粘膜側からの各種の刺激が細胞層の機能にどのような影響を及ぽすか検討中した。その結果、例えぱ粘膜側からのペプチドの添加が、基底膜側へのある種のアミノ酸の顕著な放出をもたらす現象などは観察されたものの、粘膜側からの食品刺激が別のシグナルとなってシグナルとなって基底膜側に伝わることを明確に示すような実験結果は得られなかった。
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