本研究は、細胞内における大規模なタンパク質分解を担うオートファジー(自食作用)の調節に関わる未知の物質群を検索する試みである。2年間の研究計画に基づいて得られた成果は以下の通りである。 1. アミノ酸の情報伝達因子の検索:バイオアッセイ系作成のための細菌毒素α-トキシンの精製法を改良・工夫した。活性画分は熱に安定、酸・中性で安定、アルカリ性で失活、陽イオン性を示した。オートファジー経路のうち、アミノ酸の作用点と考えられる自食胞の形成段階に作用することが示唆された。 2. グルカゴンによりリン酸化されるタンパク質について:グルカゴンにより細胞内でリン酸化されるタンパク質のうち、粗リソソーム画分に局在するものとして49kDaのタンパク質が発見された。in vitroでcAMPによりリン酸化されることが確認された。 3. 自食作用成熟段階に関わるGTP結合タンパク質について:細菌毒素ストレプトリジンOによるセミインタクト肝細胞で自食作用成熟段階に関わる細胞質タンパク質を検索し、阻害剤の実験からGTP結合タンパク質やNEM感受性タンパク質などの関与が強く示唆された。途中、毒素標品に問題が出たため、大きな支障が出ている。現在はバイオアッセイ系としてin vitro系である自食胞とリソソームの膜融合系の開発に重点を移している。幸い、膜融合反応のプローブとして細胞質酵素Betain homocystein methyltransferaseの限定分解系を利用できそうであり、本分野で初のin vitro系の成功が期待される。
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