研究概要 |
植物性食品素材中にはlgE抗体の産生を誘導するタンパク質が広く存在する。本研究はそのlgE抗体結合性タンパク質をアレルギー患者の血清を用いてスクリーニングし、その特性を解明することを目的として行われたものであり、以下に示す研究成果をえた。 1, 植物性食品素材のタンパク質を抽出し、イムノブロット法によりlgE結合性タンパク質を特定した。その多くはタンパク質中のアスパラギン結合型糖鎖を認識するantiHRP抗体の添加で結合が阻害された。 2, 大豆主要アレルゲンのcDNAを利用してリコンビナントGly m Bd 30Kを大腸菌で調製した。このものは糖鎖を有せず、患者血清によるイムノブロットは極端に減退した。この事実より、患者血清中における糖鎖認識lgE抗体の存在を立証した。 3, 種々の植物性食品素材について糖鎖が認識されるタンパク質をスクリーニングした。ジャガイモ、ニンジン、カボチャ、小麦、タマネギ等ほとんど全ての素材においてその存在が確認された。 4, 患者血清の認識する主要タンパク質の代表としてジャガイモを材料にそのタンパク質を単離し、パタチンと同定した。これもantiHRPでその結合が阻害される高マンノース型の糖鎖含有タンパク質であることを明らかにした。 5, 植物性食品中の交差反応性を有する主要な共通抗原のエピトープは、タンパク質ペプチド鎖に由来せず、アスパラギン結合型糖鎖がエピトープとして機能していることが証明された。
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