研究課題/領域番号 |
09460064
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
高橋 邦秀 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (80281707)
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研究分担者 |
渋谷 正人 北海道大学, 大学院・農学研究科, 助教授 (10226194)
矢島 崇 北海道大学, 大学院・農学研究科, 教授 (90142702)
松田 彊 北海道大学, 農学部・附属演習林, 教授 (30002075)
春木 雅寛 北海道大学, 大学院・地球環境科学研究科, 助手 (40113609)
野田 真人 北海道大学, 農学部・附属演習林, 助教授 (00101238)
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キーワード | トドマツ / 海岸砂丘林 / 風 / 飛来塩分量 / パッチ状更新 / 光合成特性 / 林分崩壊モデル |
研究概要 |
最終年度であるため、不足していたトドマツ砂丘林の光利用特性を集中的に調査し、これまでの調査結果を加えて報告書を作成した。4年間の研究結果を要約すると以下のようになる。 1)稚咲内のトドマツ砂丘林は、汀線より約600mに位置する前砂丘(矮性ミズナラ林が成立している)の後背地にあり、前砂丘の開口部に面しているトドマツ林分では枯損木が28〜43%に達している。 2)トドマツ砂丘林は1000〜4000m^2規模でパッチ状に更新しており、海岸寄りの砂丘林のパッチサイズは内陸側の砂丘林のパッチサイズより大きい。航空写真で調べた過去25年の経年変化は、海岸寄りの上層本から崩壊が始まっていた。 3)砂丘林では夏季に南〜東風、冬季に北〜西風が卓越し、平均風速は冬季が有意に強く、12月には5m/sを越えている。前砂丘の開口部に面している林分では対照林分より常に風が強く、枝の偏りは冬季の風向きと一致している。飛来塩分量も開口部で多くなっている。 4)海岸寄りの砂丘は内陸側の砂丘より乾燥しやすく保水性が小さい。塩素イオン濃度も有意に高い値を示している。 5)年輪解析の結果は、前砂丘の開口によりトドマツ林がなんらかの影響を受けたことを示している。 6)トドマツ樹冠に占める葉齢別葉量は当年葉〜4年葉が7割から10割を占め、当年葉比率の高い樹高階は4mであった。樹冠下や樹冠内の葉は被陰条件に順化した光合成特性を示した。樹高10mを越える個体はシュートの伸長成長が低下しており、なんらかのストレスの存在を伺わせた。 7)トドマツ砂丘林の更新の特徴は、限られた期間内に一斉に更新することである。樹高は12mが限界で林齢80年を越すと崩壊が始まると推察され、一斉林的な林分崩壊のモデルの提示をおこなった。また、これらの結果から、冬季の風や飛来塩分に対する前砂丘による保全効果は明らかである。
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