研究概要 |
マツ材線虫病の萎凋原因について、通道阻害を引き起こすキャビテーションの発生と拡大が,病徴進展の重要な鍵であると考えられる。前年度の研究成果から、モノテルペン類生成は通道阻害の原因物質ではないことが明らかにされた。そこで、病徴進展の過程で生ずるキャビテーションの発生原因について,密接な関係にあるとされる蒸散流の表面張力に着目し,病徴の進展とキャビテーションの発生について検討を加えた。 苗畑に植栽された6年生クロマツ苗を用い,強病原性S6-1系統材線虫2万頭を接種した結果、病徴前期に蒸散流の表面張力が低下し,引き続き低下する苗は枯死し、低下が回復した苗ではその後病徴は進展しなかった。このことは、蒸散流の表面張力の低下がキャビテーションの発生を促すことから,材線虫病におけるキャビテーションは蒸散流の表面張力の低下によって引き起こされるものと考えられた。つまり,表面張力の低下によるキャビテーションの発生がある閾値を超えて生じた場合に初めて病徴進展が引き起こされるものと推察された。 以上の結果から、蒸散流の表面張力の低下が材線虫病の病徴進展因子として作用していることが明らかにされた。
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