研究概要 |
1.キャビテーションの発生要因として考えられる木部樹液の表面張力と,樹種間の材線虫病抵抗性との関連について検討した。その結果,マツノザイセンチュウ(材線虫)接種後に著しく表面張力が低下した樹種では,病徴の進展が速やかで枯死率が高かった。これに対して,表面張力の低下が遅い樹種では病徴の進展は遅く枯死率が低かった。この結果から,材線虫感染後の表面張力の低下が大きいほど病徴の発現が顕著であることが明らかにされた。従って,材線虫の感染に対する表面張力の変化が病徴の発現を抑制する要因であり,また材線虫病抵抗性と密接な関連を持つことが明かにされた。 2.木部樹液の表面張力を低下させる原因物質について,材線虫代謝産物の関与について検討を行った。その結果,材線虫を増殖させた培地の抽出液には表面張力の低下が認められなかったことから,表面張力低下の原因物質は材線虫の感染に伴ってマツが産生する異常代謝産物であるものと考えられた。 3.キャビテーションの発生を促進する蓚酸が材線病の病徴の進展に関与するか否かを知る目的で,材線虫を増殖させた培地抽出液のガスクロマトグラフ分析を行った。その結果,材線虫は蓚酸を産生し、近縁種で非病原性のニセマツノザイセンチュウは蓚酸を産生しないことが明かにされた。これらのことから,材線虫の産生する蓚酸がキャビテーション発生の原因物質の一つであると推測され,蓚酸産生能の違いが病原性と関連する可能性が示唆された。
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