この科学研究費を頂く前までの結果から、ケイ酸(ケイ酸モノマーあるいはコロイド状ケイ酸)とホウ素化合物の混合溶液を木材に注入し、その複合ゲル化物を木材中に固定することによって、哺乳動物に対しては低毒性でありながら木材腐朽菌の生育に対して非常に高い抵抗性能を持つことが分かった。 そこで平成9年度は、まず、シロアリに対するこの複合ゲル化物による処理材の抵抗抵抗性能を、日本木材保存協会規格第12号「加圧処理用木材防蟻剤の防蟻効力試験方法」に準じ測定した。その結果、耐侯処理(室温水中浸漬8時間、60℃乾燥16時間のサイクルを10回繰り返し)の有無に関わらず、無処理木材に対したイエシロアリが21日間の飼育で全て生存しているのに対し、処理材に対したシロアリは接触試験開始後5日以内に全て死亡し、この複合ゲル化物が接触毒性を有することを示した。また、同規格の総合試験における21日間の飼育試験による質量減少率は、無処理木材の約18%に対し、複合ゲル化物固定木材の場合0〜1%であった。さらに、このシロアリの食害に対する抵抗試験では、上記規格第12号に準じて屋外試験を行っている。 さらに、この複合ゲル化物が木材腐朽菌に対してどのように作用して腐朽を抑えているかを解明するために、その成長阻害作用、腐朽酵素生成阻害作用、腐朽酵素活性に対する阻害作用を現在測定している。
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