防腐機構:配合割合の異なる低分子量ケイ酸-ホウ酸複合薬剤を含浸し硬化させた木粉をHighleyの液体培地に混合し、オオウズラタケを静置培養した。菌体の成長は、薬剤中のホウ酸量が多いほど阻害され、生成タンパク量も少ないことが判った。また、培養液を部分精製して得た粗酵素のCx、C1セルラーゼ、キシラナーゼおよびマンナーゼの各活性は、菌体の成長がみられる場合でも、コントロールの場合と比較して低くかった。しかし、その場合でも生成タンパク量に対する酵素活性、すなわち比活性はほぼ等しかった。一方、ホウ酸添加量が多い場合にはシュウ酸生成による培地のpH低下が抑えられた。すなわち、キチン質層を浸透するとされるホウ素化合物の添加でオオウズラタケ菌の成長とシュウ酸生成機構が阻害され、一方オオウズラタケの木材腐朽の初期酵素とされるマンナーゼ等の活性はそれほど阻害されないことが判った。 防蟻効力試験:防腐機構を検討したと同じ組成の低分子量ケイ酸-ホウ酸複合薬剤について、防蟻効力評価試験を行った。その結果、薬剤に含まれるホウ酸が多いほど防蟻効力が大きく、シロアリは接触毒性によって死亡すること、また薬剤を注入した木材を餌として与えた場合は1〜4日以内に全てのシロアリが死亡し、試験片の質量減少率はコントロールの49%に対し3〜6%に抑制された(この値には試験中の溶脱した薬剤重も含まれる)。また、杭状試験体をイエシロアリが棲息している野外に設置した。この試験体は平成12年2月まで放置し、シロアリの食害などによる質量減少率を測定する。 難燃化効力試験:低分子量ケイ酸の種類および添加するホウ酸の量を変えた条件で調製した複合木材について、コーンカロリメータを用いて燃焼性試験を行った。 その結果、ホウ酸の割合が多い場合ほど着火時間と見かけのフラッシュオーバーまでの時間が遅れ、発煙量と発熱速度は減少し、難燃化の程度は向上した。
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