薬剤の固定性:低分子量ケイ酸-無機化合物複合薬剤で処理時のWPGは、ケイ酸-金属塩複合薬剤で17〜22%、ホウ酸複合薬剤で約15%であった。この処理材をオオウズラタケおよびカワラタケによる腐朽試験に供した。腐朽試験後の試験片の灰分は、無処理材の約0.3%(w/w)に対し、金属塩複合薬剤の場合16〜17%、ホウ酸複合薬剤の場合13.5〜14%であった。すなわち、金属塩複合薬剤の方がホウ酸複合薬剤より、腐朽試験時程度の水分環境での薬剤溶脱量が大きいことが分かった。灰分組成は金属塩複合薬剤の場合、ケイ素の減少割合に比べて金属の減少割合が大きかった。ホウ酸複合薬剤はケイ素、ホウ素ともに腐朽前後でのケイ素とホウ素との減少割合に差はなかった。すなわち、低分子量ケイ酸と複合させる薬剤は、高分子量ケイ酸の結晶格子に入りうるホウ酸が最も良い。 防腐機構:ホウ酸の配合割合の異なる複合薬剤で処理した木粉を混合した液体培地でオオウズラタケを静置培養した。菌糸体の成長はホウ酸量が多いほど阻害され、生成タンパク量も少なかった。培養液から得た粗酵素の各種酵素の活性は、コントロールのそれより低くかった。ホウ酸量が多い場合、培地のpH低下が抑えられた。すなわち、キチン質層を浸透するとされるホウ素化合物の添加でオオウズラタケ菌の成長とシュウ酸生成機構が阻害され、オオウズラタケの腐朽の初期酵素とされるマンナーゼ等の活性はそれほど阻害されなかった。 防蟻効力試験:ホウ酸量が多いほど防蟻効力は大きく、シロアリは接触毒性によって死亡した。処理木材を餌とした場合は1〜4日以内に全てのシロアリが死亡し、試験片の質量減少率はコントロールの49%に対し3〜6%に抑制された(この値には試験中の溶脱した薬剤重も含まれる)。 難燃化効力試験:低分子量ケイ酸の種類および添加ホウ酸量を変えて調製した複合木材について、コーンカロリメータを用いて燃焼性試験を行った。その結果、ホウ酸の割合が多い場合ほど着火時間と見かけのフラッシュオーバーまでの時間が遅れ、発煙量と発熱速度は減少し、難燃化の程度は向上した。 毒性試験:低分子量ケイ酸-ホウ酸複合薬剤で処理した木材を水中浸漬し、薬剤を溶脱させた。JIS K 0102の中の「魚類による急性毒性試験方法」に準じて、溶脱溶液中でヒメダカを飼育して毒性を検討した。しかしながら、ヒメダカの死亡率が同じ溶脱溶液でも繰り返し試験のたびに変化し、一定のデータが得られず現在実験方法を再検討している。
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