研究概要 |
本研究では、スルメイカを対象として、それらの資源変動に大きく関わる再生産機構の解明を目的としている。平成10年度に得られた成果は,下記の通りである。 (1) 人工授精によりふ化させた幼生を用いて,海洋バクテリアを起源とする有機けんだく物を人工的に作成して,その取りこみを調べた。ただし,有機物作成に問題があり,次年度に再度実施する。 (2) 昨年10月に隠岐諸島北東海域において,水温・水深センサー付水中ロボットカメラ(ROV),衛星画像情報(表面水温・クロロフィル)およびADCP(流れ場)による卵塊の探索,およびモックネスネットによるスルメイカ幼生の鉛直分布特性を調べた。その結果,密度躍層付近に卵塊が集積し,ふ化幼生は密度躍層で最も多く出現し,より大型の幼イカは密度躍層以深にも分布することが明らかにできた。 (3) 対馬海峡から富山沖にかけての海域における暖水渦の経年的挙動解析を行った。特に秋以降の暖水渦の挙動が,スルメイカ幼生の生残に関わる可能性が示唆された。 (4) 昨年に続いて,衛星画像を用いた再生産可能海域の季節的・経年的変化,および親イカ豊度とふ化幼生豊度の親子関係を調べた。その結果,1989年から3年間の好適な再生産環境がスルメイカ資源の増加をもたらしたと推定された。しかし,1990年代でも寒冷年では再生産海域(特に冬)の縮小が認められ,これらがスルメイカ資源の親子関係に強く影響すると考えられた。
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