研究課題/領域番号 |
09460085
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
中田 英昭 東京大学, 海洋研究所, 助教授 (60114584)
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研究分担者 |
笠井 亮秀 京都大学, 大学院・農学研究科, 助手 (80263127)
木村 伸吾 東京大学, 海洋研究所, 助手 (90202043)
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キーワード | 中規模海洋変動 / 小型浮魚類 / 仔稚魚 / 黒潮・親潮移行域 / 黒潮フロント / 生物生産 / 加入量変動 / 初期減耗 |
研究概要 |
本研究では、黒潮・親潮移行域を主な対象として、イワシ類など小型浮魚類の加入量変動に重要なかかわりを持つと考えられる中規模海洋変動、とくに黒潮フロントの擾乱に伴ってその縁辺域に発生する暖水舌や低気圧性の前線渦の、生物生産や仔稚魚の成長・生残に対する影響のプロセスを解明しようとしている。本年度はまず、黒潮フロント縁辺の中規模海洋変動の実態やその生物生産、資源再生産との関連に関するこれまでのデータの解析を進めるとともに、5〜6月には白鳳丸を利用して、遠州灘から黒潮・親潮移行域にかけての黒潮前線域で集中的な精密観測を行い、海洋の物理的な構造に対応させながら栄養塩・クロロフィル分布、仔稚魚やその餌生物の分布・組成、さらには仔稚魚の摂餌状態や栄養状態、成長履歴などの空間変化に関するデータを取得した。 これまでの解析を通じて、黒潮・親潮移行域における仔稚魚(主にカタクチイワシ)やその餌生物の空間分布構造が、水温などで指標される海洋の物理構造ときわめて密接に関連していること、とくに黒潮フロントの北縁に広がる黒潮系の暖水域は生物生産が高く、仔稚魚の摂餌に潜在的に好適な条件を提供していることが分かってきた。その生物生産の高さは、黒潮フロントの擾乱にともなって周期的・間欠的に発生する低気圧性の前線渦による栄養塩の湧昇や仔稚魚とその餌生物の水平輸送の効果に大きく依存しているものと推察された。また、カタクチイワシの発生初期の卵が、黒潮系暖水と親潮系冷水のフロント付近で集中的に採集されたことから、そのような海洋特性が産卵行動とも密接に関連することが示唆されている。来年度は、この低気圧渦の発生に連なる生物生産の変化過程を、漂流ブイ追跡などを併用しながら現場で検証することを計画している。 なお、以上の研究成果については、論文として印刷公表するとともに、日本水産学会、日本海洋学会などで口頭発表(計7題)を行った。
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