1.脊髄から逆行性に標識されたコイ中脳の内側縦束核(Nflm)ニューロンの数は両側合わせて約120、抗グルタミン酸抗体で免疫染色されたNflmニューロンの数は同じく約400であった。両者の細胞体の大きさは重なるので、運動の誘起に関わるNflmニューロンはグルタミン酸作動性と考えられる。 2.不動化したコイから、Nflmニューロンと脊髄運動ニューロンの活動を同時に記録した。Nflmニューロンの活動記録にはより細いガラス微小電極を用いたところ単一ユニット活動の記録が可能となった。 3.神経系だけの遊泳運動である仮想的遊泳における、Nflmニューロンの活動様式は予想よりも多様であり、単純にtonicタイプとphasicタイプに分けられることが明らかとなった。以下のようなニューロンが観察された。 1.一連の運動の間、持続的にスパイクを出すニューロン(tonicニューロン) 2.一連の運動の間、断続的にスパイクを出すニューロン(phasicニューロン) a.片側または両側の脊髄運動ニューロンの叢放電時にスパイク頻度が増加 b.両側の脊髄運動ニューロンの叢放電時にスパイク頻度が減少する 3.脊髄運動ニューロンの活動と無関係にスパイクを出すニューロン 4.記録したニューロンを、電極に充填したneurobiotinで標識したところ、これらのニューロンは活動のタイプと無関係にNflm内に混在していることが分かった。 5.自由遊泳している魚の脳に複数の慢性電極を植え込み、頭部に固定したバッファー用オペアンプで増幅後、Nflmニューロンの電気的活動を導出する方法を開発した。 6.以上より、魚が遊泳運動を開発するときには、まずtoniocニューロンが脊髄のリズム生成回路を賦活することにより、波状運動による通常の遊泳運動を引き起こし、一方、何種類かのphasicニューロンは方向転換時など運動を修飾する際に活動するものと推察された。
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