研究課題/領域番号 |
09460088
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
室賀 清邦 広島大学, 生物生産学部, 教授 (30011993)
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研究分担者 |
西澤 豊彦 広島大学, 生物生産学部, 助手 (10222184)
中井 敏博 広島大学, 生物生産学部, 助教授 (60164117)
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キーワード | アワビ / 筋萎縮症 / ウイルス病 / 初代培養細胞 / 種苗生産 / 血球細胞 / 濾過性病原体 |
研究概要 |
まず、各地で発生しているクロアワビ稚貝の大量死が筋萎縮症によるものであるかどうかを病理組織学的手法により調べた。また、原因ウイルスを分離・培養するための培養細胞としてクロアワビ細胞の初代培養を試みた。その初代培養細胞を利用して、罹病稚貝からウイルスの分離を試み、分離されたウイルスの病原性をクロアワビ稚貝を用いて調べた。それぞれの研究結果の概要は以下の通りである。 1)発生状況調査:神奈川県、福井県、和歌山県、京都府、島根県、高知県、福岡県、宮崎県、および長崎県の9府県から得られた稚貝に、筋萎縮症に特有な病変(腹足神経幹における腫瘍様病変部の形成)が認められ、本病が西日本において広く流行していることが明らかになった。 2)クロアワビ細胞の初代培養:血リンパから得られた血球を改変L-15培地を用いて15〜25℃で培養したところ、血球細胞は培養容器の基底面に付着して単層シートを形成し、20℃では概ね1か月程度維持された。 3)ウイルスの分離:上記の初代培養細胞に罹病貝からのホモジネート濾液を接種し、20℃で培養したところ、細胞塊の形成を特徴とする細胞変性効果(CPE)が認められ、電顕観察により直径約120nmの球形ウイルスが細胞外に認められた。 4)分離ウイルスの病原性:罹病貝のホモジネート濾液および上記の分離ウイルスをクロアワビ稚貝に接種したところ、2ないし3か月後に、ホモジネート濾液接種群に発症と死亡が認められたが、ウイルス接種区では筋萎縮症の発生はみられなかった。 以上の結果から、本病は濾過性病原体による感染症であることが確認されたが、分離されたウイルスの病原性を確認することはできず、病原体を特定するには至らなかった。
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