昨年に引き続き、ハンドウイルカの群に併走しながら鳴音の収録を行った。また、近くの水族館で飼育されていたハンドウイルカは2頭死亡し4頭となっていたがその鳴音をも収録し、そのシグネチュアーホイッスルの恒常性と変動幅の解析を行った。その結果、昨年までの分類方法よりもより定量的な分類基準の改善が可能になった。そこで、本年度収録したホイッスルの分類をこの方法で行うと共に、過去のデータについても新しい分類法で分類し直す作業を行った。その結果、シグネチュアーホイッスルは本年までに確認された総数で251種、本年のデータからは231種であった。飼育個体の変動幅からさらに分類の量的判定基準を変更する必要があると考えられた。また、過去4年間にわたる各シグネチュアーホイッスルの恒常性は本年も確認されているが、古い記録ほどその後の再出現が少ない傾向がある。 これらのシグネチュアーホイッスルの内、互いの発音間隔が極めて短いもの(応答)からシグネチュアーホイッスルの関連性をも調査した。これまですべてのデータをまとめると367例の組み合わせが観察された。この中から複数回鳴き交わしのあったものは15例あり、内5例は複数日・月・年にも観察されている。さらに、このような鳴き交わしの間に決まってそのペアに付随するシグネチャーホイッスルがいくつかしばしば観察されている。鳴き交わしシグネチャーホイッスルを含めるとそれらの種類は最大でも8種であった。これらは親子や家族などのような社会構造の一部を伺わせるものであり更にデータを収集して関連性を調査する予定である。これには陸上からの目視による群構造の変化・特徴も大いに参考になった。なお、ウォッチングボートの数が年追って増えており長時間の併走が益々困難になったので、調査回数を増やすことも考慮している。
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