天草通詞島沖に滞留しているハンドウイルカの群に併走しながら鳴音の収録を行った。あわせて、近くの水族館で飼育されているハンドウイルカの鳴音も収録し、そのシグネチュアーホイッスルの変動幅の解析を行った。その結果、次第に昨年までの分類方法よりもより定量的な分類基準の改善が可能になった。そこで、過去のデータについても新しい分類法で分類し直す作業を行った。その結果、シグネチュアーホイッスルは本年までに確認された総数で251種、本年のデータからは231種が観察された。前年まで総数158種に対し100を少し上回る程度にまとめることができたに比べ本年新しく観察されたものが著しく多い。この点に関して、水族館飼育個体を用いたシグネチャーホイッスルの変動幅の解析結果から更にまとめ、分類の判定基準を更に精度の高いものにする必要があると考えられる。また、過去4年間にわたる各シグネチュアーホイッスルの恒常性は本年も確認されているが、古い記録ほどその後の再出現が少ない傾向があった。 これらのシグネチュアーホイッスルの内、互いの発音間隔が極めて短いもの(応答)からシグネチュアーホイッスルを発する個体間の関連性をも調査した。これまでのデータからは367例の組み合わせが観察された。この中で複数回の授受に関係したものは15例あったが、内5例は複数の調査日・調査年にも確認された。また、特定の組み合わせに別の特定のシグネチャーホイッスルがしばしば聞かれることがあった。このような一つの鳴き交わしに関係するシグネチャーホイッスルの種類総数はそれぞれ最大でも8種であった。これは群を構成する家族単位(小群)の可能性が高く、群の社会構造の解明や行動の解析に役立つものと考えられる。
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