研究概要 |
1.幼生飼育 1998年2月に孵化したハナサキガニのゾエア約30,000尾を2トン水槽に収容し、水温10°C,Artemia nauplii+Thalassiosira spを与えて飼育を行った。幼生は4日後にゾエア2令になったが、7日後に水質が悪化し、3令に脱皮することなく死亡した。引き続いて行った2回の飼育実験も同様に死亡したが、3令の生存個体1,000尾を1001の環流式水槽に移槽したところ約75%がグロコトエに変態した。1999年2月15-18日に孵化したハナサキガニのゾエアに対してArtemia nauplii+Thalassiosira sp.(併用区)あるいはArtemianaup1ii(単独区)及びThalassiosira sp.(単独区)をそれぞれ投餌して飼育した。また、前年の結果から、水質の維持が重要と考えられたので、隔日に換水を行った。孵化貯化25日後,併用区及びArtemia単独区では変態したが、Thalassiosira sp.単独区は34日を要した。生残率はそれぞれ91,90,34%であった。2.幼生の形態ハナサキガニのゾエア1令の口器付属肢はタラバガニのそれと基本的には同一であった。相違点としては、タラバガニが第1小顎基節先端に2本の剛毛を備えているのに対して、ハナサキガニのそれは3本であった。3.脂肪の蓄積 ハナサキガニのゾエアの中腸腺にもタラバガニと同様に大きな脂肪滴を有する吸収細胞の存在が認められた。そのグロコトエはタラバガニと同様に無摂餌の段階であるが、餌科別に孵化直後及び変態前のゾエア、初期及び終期のグロコトエについて脂質分析のため凍結乾燥資料を作成中である。4.行動観察 グロコトエの基質への着底は変態当日に始まり、附属肢で化繊網を把握した。底を化繊網、礫、砂の3区画に造成した水槽内では、各区画を約75,20,1%の割合で選択した。グロコトエの遊泳行動には明瞭な日周性があり、日中14時を最大に遊泳個体が出現したが、夜間は基質を選ばず沈降して活動を停止した。
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