研究分担者 |
松原 孝博 北海道区水産研究所, 資源増殖部, 室長
征矢野 清 長崎大学, 水産学部, 助教授 (80260735)
高野 和則 琉球大学, 熱帯生物圏研究センター, 教授 (30001605)
足立 伸次 北海道大学, 水産学部, 助教授 (40231930)
上田 宏 北海道大学, 水産学部, 助教授 (00160177)
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研究概要 |
ビテロゲニン(Vg)は,エストラジオール-17β(E_2)の作用のもとに,卵黄形成期の雌肝臓で合成され血液中を介して卵内に取り込まれ卵黄蛋白質を構成する。近年,魚類におけるVgは早期雌雄判別,また環境水中のエストロゲン物質のバイオマーカーとして注目されている。水産魚種を対象種として,Vg合成の内分泌支配,成熟に伴う動態,及び取り込み並びに卵黄蛋白への分解過程を解析することにより,魚類の卵黄形成過程を解明することを研究目的とした。 1.細胞培養系を用いたVg合成:ウナギ肝の初代培養系を用いてVg合成能の挙動を調べた結果,雄肝細胞ではE_2に対する顕著なVg合成は見られなかった。雌肝では高濃度E_2により,顕著なVg合成が確認された。卵黄形成期雌肝細胞にE_2とサケ下垂体を複合添加した結果,E_2の単独添加に比べ,顕著なVg合成が確認された。また成長ホルモンおよびプロラクチンの添加も効果的であった。 2.海産魚Vgの精製:海産魚カンパチ,キジハタ及びトラフグの雌血清またはE_2処理魚血清からVgを精製した。精製品を家兎に免疫しそれぞれ抗体を作製した。Vgの血中濃度はドットプロティング法あるいはマンシーニ法を確立し測定した。カンパチVgの周年変化を測定した結果から卵黄形成期を特定した。 3.Vgの卵黄蛋白への分解過程及び分解酵素の精製:サクラマス卵巣からVg分解酵素の精製を行い,42kDaの精製品を得た。この蛋白質は抗ヒトカテプシンD血清に反応した。サケ科魚類のVg分子解裂は,カテプシンD様酵素の作用によることが示唆された。 4.卵黄蛋白のポリペプタイドヘの分解過程:マツカワの卵より2種のリポビテリン(Lv)を精製し,それらに対する抗体を作製した。血清中に2種類のVgの存在が明らかとなり,Vgは卵に取り込まれると2種のLvと2種のβ^1-component及びホスビチンに解裂されると推察され,その後最終成熟期を経ると1種のLvは部分分解し,他の卵黄蛋白はアミノ酸まで分解されることが示唆された。
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