研究概要 |
好塩性乳酸菌はTetragenococcus halophilusの一種が知られているのみであるが、飛島の魚醤油中にはヒスタミン生成能や糖発酵能等の点でT.halophilusとは表現形質の異なる好塩性乳酸菌が存在するので、本年度はこの好塩性乳酸菌の分類学的位置について検討した。すなわち、飛島魚醤油より分離した新規好塩性乳酸菌11株および対照としてT.halophilus(ATCC株)を供試菌とし、表現形質(Bergey's Manualによる形態、培養性状、各種糖類の発酵試験、生成乳酸の旋光性、諸酵素活性、GC含量等)、化学性状(菌体脂肪酸組成、細胞壁成分)、遺伝子性状(DNAの塩基組成、DNA-DNAハイブリダイゼーション、Eco RI,Pst I,Ava I,Alu I等の制限酵素による16SrRNA遺伝子切断パターン(RFLP)解析)を調べ、さらに代表株(Xl株)について16S rRNA遺伝子配列を決定した。その結果、本菌群のRFLPパターンはすべての制限酵素で同じパターンを示したが、T.halophilusのものとは異なった。X1株の16S rRNA遺伝子配列結果をもとに相同性を比較した結果、X1株とT.halophilusの配列の相同性は93.4%であった。また両菌群のDNA-DNAハイブリダイゼーションによる相同性は50%以下であり、新規乳酸菌はT.halophilusとは異種と考えられたので、これにT.muriaticusと命名した。
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