塩辛熟成中における微生物の役割を明らかにするため、抗生物質添加および非添加の塩辛を調整し、熟成中の有機酸量の変化を調べた結果、抗生物質非添加の塩辛でのみ乳酸が最大225mg/100g、酢酸が153mg/100g蓄積し、その生成には塩辛中の優勢菌群であるStaphylococcusが重要であることが分かった。また塩辛(食塩10%)の微生物学的安全性を確認するため、塩辛に数種の食中毒菌を接種してその消長を調べた結果、黄色ブドウ球菌は生残する可能性が示されたが、熟成期間中増殖はせず、エンテロトキシンも検出されなかった。腸炎ビブリオ、E型ボツリヌス菌は死滅し検出できなくなった。 フグ卵巣糠漬けにおいてフグ毒が減毒される原因の微生物面からの検討した結果、加熱滅菌した糠漬けにフグ毒を添加しても、減毒の程度は非加熱の場合と差がないことなどから、微生物の関与はないと考えられた。塩蔵工程の優勢菌群として分離された好塩偏性嫌気性細菌は、酪酸、プロピオン酸産生群とエタノール産生菌群の2群に大別され、前者はHaloanaerobium Alcaliphilum、後者はHaloanaerobium属の新種であることが判明し、H.fermentansと命名することを提唱した。また糠漬け製造工程中の優勢菌群である好塩性乳酸菌はTetragenococcus halophilusとT.muriaticusの2群に大別された。後者は、山形県飛島のイカ肝臓魚醤油以外からの初めての分離例である
|