研究概要 |
各種水産発酵食品のうち、くさや、イカ塩辛、フグ卵巣糖漬けについて下記の微生物学的課題について研究した。 1.くさや汁中らせん菌の分類 くさや汁より分離した大型のらせん菌は、16SrRNA塩基配列を用いた系統解析および近縁種とのDNA-DNAハイブリダイゼーション等の結果から新属に該当すると考えられたので、新たにMarinospirillum属を提唱し、M.megateriumと命名した。 2.くさや汁中の微生物相の解析 くさや汁より直接DNAを抽出し、16SrRNA遺伝子塩基配列を解析して優占菌群を検討したところ、Bacteroides-Cytophaga群,wall less spirohaeta群など、これまで報告されていない未知の菌群と相同性の高い菌群が認められた。 3.塩辛熟成中における微生物の役割と食中毒菌の挙動 塩辛熟成中に蓄積される有機酸(乳酸が最大225mg/100g、酢酸が153mg/100g)の生成には塩辛中の優勢菌群であるStaphylococcusが重要であることが分かった。また塩辛に数種の食中毒菌を接種してその消長を調べた結果、増殖は認められなかった。 4.塩辛中の球菌類の簡易判別法の検討 StaphylococcusとMicrococcus属の簡易判別にはOFテストは不適当であり、両菌群はFP agar及びSK agarにより明確に判別できることが確認された。 5.フグ卵巣糖漬けの細菌相 糖漬けの塩蔵工程の優勢菌群である好塩偏性嫌気性細菌のなかに新種のHaloanaerobium fermentansを発見した。また、糖漬け製造工程中の優勢菌群である好塩性乳酸菌はTetragenococcus halophilusとT.muriaticusの2群に大別された。
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