前年度までに紅藻7種、縁藻2種および藍藻1種の各レクチンが認識する糖鎖構造を明らかにした。また、高マンノース型糖鎖に選択的に結合する紅藻Eucheuma serraと藍藻Oscillatoria agardhiiの各レクチンの一次構造を明らかにした。両者は互いに高い共通配列をもち、前者はN末端67アミノ酸残基が4回、後者は同残基が2回繰り返した構造からなり、繰り返し数と両レクチンの糖鎖結合部位数、それぞれ4および2個、が一致していることから、繰り返し単位部分が両レクチンの糖鎖認識ドメインを構成すると考えられた。今年度は、両レクチン蛋白質の糖鎖認識ドメインの単離と同定を試みた。すなわち、E.serraレクチン蛋白質のLys-C消化物(N末端67残基を含む)をyeast mannan(またはtyroglobulin)-Cellulofineアフィニティーカラムに供し、同カラムに親和性をもつと予想される糖鎖確認ペプチドの単離を試みたが成功しなかった。また、BIACoreを用いて、同消化物中に高マンノース型糖鎖と親和性をもつペプチドを検索したがみいだすことができなかった。なお、E.serraレクチンの3次元構造解析に資するために同レクチン蛋白質の結晶化を行い、針状結晶を得た。 また、一次構造が判明している紅藻Hypnea japonicaレクチンが単純蛋白質であるphospholipase A2と結合することをみいだした。このレクチンは分子内に2つの異なる結合サイト(糖と蛋白質)をもつことが予想される。本レクチンcDNAのクローニングに関しては、多量の粘質多糖を含む本海藻からのmRNAの抽出法を確立するにとどまった。 海藻レクチンの早期ガン診断薬としての応用化に関する研究も試みた。認識糖鎖構造が明らかとなった3種類の海藻レクチンを選び、ラット胃癌組織をビオチン化海藻レクチンを用いてレクチン染色した。その結果、それら海藻レクチンが腫瘍細胞と特異的に結合することを認めた。
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