研究概要 |
日本農業の公企業経営に関して、つぎの諸点が解明された。 1,地域農業資源の公的管理を目的とする公企業経営は農地有効利用型、畜産振興型、山村振興型、農業振興型に類型化できること。また農地管理のみを目的とする公企業経営は農地斡旋型、保全管理型、農作業受託型、総合管理型に類型化できること。 2,農業の公企業経営は経営困難な民間部門を公共部門が支援する「公共支援型公企業」であるため、今後、その民間部門を経営していく農業経営者の育成(インキュベーション)が展望できない限り、公企業経営の展開は望めないこと。当面、そのインキュベーション機能は公企業経営としての第三セクターに期待できること。 3,農業の公企業経営は公共性(公益性)に起因する公共用益原則、公共規制原則等と企業性(私益性)に起因する独立採算原則、生産性原則等に基づいて管理される。したがって、その管理においては公共性(公益性)と企業性(私益性)の調整が必要になる。しかし、公企業経営の多くは企業性(私益性)を最大限追求したとしても、それだけで経営コストをカバーすることが困難であること。そのため地方自治体から赤字補填のための一般財源が投入されるが、その投入額は年々累積する傾向にあること。 4,農地管理を目的とする公企業経営の公的費用負担は耕境内に位置し、かつ食料供給機能と他の多面的機能が共に高い農地を対象にするべきであること。また公的費用負担は国民が農家にその農地管理を委託することになるので、農地管理料相当分が公的負担になること。
|