本研究は、様々な環境条件(物理的環境条件・社会経済的環境条件等)となる定量的及び定性的要因を加味した中山間地域農村の分析から、地理情報システムを援用した農村地域の再構成化の手法を検討すること、さらに将来の直接所得補償政策(デカップリング政策)の具体的な実施において、その条件、方法、及び対象範囲等を面的に把握するための基礎的資料を得ることも併せて検討することを目的としている。 ここでは、代表的中山間地域の現況調査と住民の意向調査、及び集落を単位とした空間分析のためのデータベースの構築を行い、集落のもつ物理的な定量的要因と住民の意向などの定性的要因を加味した中山間地域農村の評価と将来のあり方を検討した。具体的には、(1)中間農業地域として島根県大東町を、山間農業地域として島根県弥栄村を調査対象地域とし、各集落の現況と農林業による地域資源の維持管理状況等の現地調査を実施した。これに基づき、各地域の集落構造・農林業構造等の定量的及び定性的データを収集・整理した。(2)農林業センサスの集落カードに基づき、農林業による集落維持管理の程度を把握した。(3)調査対象地域の地形及び地質、土壌及び植生構造、土地利用等のデータを収集し、50mメッシュのラスター型データベースを作成した。(4)このデータベースを利用して、中山間地域における国土保全機能(土砂崩壊防止機能・洪水防止機能・土壌侵食防止機能)を面的に定量的評価を行い、農林地における環境保全機能の重要性を把握した。(5)この農林業による集落維持管理の程度と国土保全機能の定量的評価から、中山間地域農村における集落保全のあり方を検討・考察した。 一般的には、中山間地域の農林業生産を維持することで、経済的効果、環境保全的効果、定住促進効果等の効果があるといわれているが、これは集落レベルで考慮すべき問題であると考えられる。従って、中山間地域農村の評価と将来のあり方を検討する場合、本研究は一つのモデルになると考えられる。
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