本年度は、高CO_2濃度下でキョウチクトウ、ネズミモチ樹木群の光合成速度の時間的変化およびCO_2濃度の上昇による土壌呼吸量の変化についての基礎的検討を行った。 (1) キョウチクトウの単位葉面積あたりの光合成速度は、夏季、秋季に高く、CO_2濃度が350ppmのとき4.5〜4.6mgCO_2dm^<-2>hr_<>で、また、CO_2濃度が800ppmのときには8.3〜8.7mgCO_2dm^<-2>hr^<-1>となり84〜89%増加した。一方冬季にはCO_2濃度350ppmのときには1.7mgCO_2dm^<-2>hr^<-1>と40%以下に低下し、800ppm下では2.9mg CO_2dm^<-2>hr^<-1>と秋季の33%に低下した。ネズミモチにおいても同様の季節変化が認められたが、CO_2濃度の上昇にともなう光合成速度の増加率は夏季において著しかった。 (2) 黒ボク土と黄色土のそれぞれ5地点で、土壌呼吸速度におよぼすCO_2濃度の影響を測定した。CO_2濃度が400〜500ppmのときに比べ、700〜900ppmのときの土壌呼吸速度は減少したが、黄色土では約20%減少し、黒ボク土ではさらに減少した。しかし地点による差が大きくさらに検討する必要がある。 (3) また、13種の樹木について単位葉面積あたりの光合成速度におよぼすCO_2濃度の影響を気温25℃、湿度75%、光強度500μmol m^<-2>s^<-1>で調べた。CO_2濃度350ppmから700ppmに倍増すると、光合成速度は各樹種とも増加し、多くの樹種で約1.5倍となった。 以上より、CO_2濃度が上昇すると、樹林地ではCO_2吸収量が増し、土壌呼吸量が減少することで、CO_2濃度の上昇割合を減ずる方向に変化する。しかし、樹種や土壌によってこれらの値は大きく異なっており、なお検討が必要である。
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