研究概要 |
得られた結果を要約すると次ぎの通りである. (1)飼料として給与した尿素は胃腸管で分解されることなくそのままの形で上部消化管から吸収される.(2)吸収された尿素は,体内で分解されることなく尿中に排泄される.(3)排泄された尿素は尿と共に総排泄腔から逆蠕動運動で盲腸内に入り,盲腸で微生物により分解され,主としてアンモニアとして吸収される.(4)吸収されたアンモニアは,肝臓で一部は可欠アミノ酸のごうせいのために利用され,一部は尿酸窒素の形で排泄される.(5)尿中に排泄される窒素化合物は,尿素と同様の盲腸を介する尿窒素の回収系で回収され,代謝される.(6)このように回収された窒素化合物の利用性は,低タンパク質飼料を給与しているような体内タンパク質が枯渇している条件のもとで高く,タンパク質が充足しているような条件下では低い.(7)盲腸内に流入するもう一つの,上部消化管で消化を免れた不消化物は,盲腸内に流入することによって,体内窒素の利用性にとってはマイナスに働く.(8)したがって,ニワトリの窒素代謝における盲腸の役割は,尿窒素の回収と不消化物の流入とのバランスの上に成り立っている.(9)ニワトリの窒素栄養において盲腸は,タンパク質栄養の条件がきわめて良い産卵鶏やブロイラーではむしろマイナスに働き,栄養条件の厳しい野鳥などでは有用に機能しているものと考えられる.(10)飼料の代謝エネルギー価に盲腸結紮は影響しない.(11)盲腸内微生物の維持は盲腸内への物の流入,棲息環境,摂取する飼料のポリフェノールやオリゴ糖含量と関係がある.(12)飼料中のペクチンは盲腸の重量と面積を高める効果を持っている. 以上の結果から,ニワトリの盲腸は,栄養条件によっては窒素代謝において重要な役割を果たすが,エネルギー代謝においては有意な役割を果たさず,食餌性繊維が盲腸内の微生物発酵の変化を通じて栄養生理に関与している可能性を示した.
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